シンリズム「夢みるふたり」のコードと分析
のののです。
今回はシンリズムさんの「夢みるふたり」という曲のコードを見ていこうと思います。
シンリズムさんは21歳のシンガーソングライターです。 Twitter : @shinrizumu
作曲、編曲はもちろん、ボーカル、ギター、ベース、キーボード、ドラム、トロンボーンなども演奏するマルチプレイヤーです。すごい。
自身の曲だけでなく近年は他アーティストへの楽曲提供もされています。
一番最近だと、RYUTistさんに「センシティブサイン」という曲を提供されました。
RYUTist - センシティブサイン【Official Video】
アルバムは現在2枚出されています。Apple Musicなどのストリーミングサイトでも聴くことができます。
今回取り上げる曲は1stアルバムに収録されています。
コードを見ていきましょう。
※間違っているところがあるかもしれません
※「 | | 」で1小節です。何も書いていないところは前のコードの繰り返しを表しています。
・イントロ(0:00~0:43)
| AM7 | A6 | A | A6 | ×4
| CM7(9) | FM7(9) | Dm7 | G7 |
| CM7 |
・Aメロ(0:43~1:12)
| Am7 | | Fm7 | | EbM7 | | AbM7 | Absus2/Bb Gb/Ab |
| Am7 | | Fm7 | | GbM7 | |Gb/Ab | |
・Bメロ(1:12~1:43)
| BbM7 | | Ebm7 | (Eb7sus4→Ebm7) |
| BbM7 | | EbmM7 | |
| BbM7 | F/A | Gm7 | Bdim7 |
| Cm7 | | F7 | |
・サビ(1:43~2:20)
| BbM7 | | Ebm7(9) | | Fm7 | Bbm7 |
| Ebm7(9) | | Fb/Gb | Gb7 |
| DbM7 | | GbM7(9) | |
| Gb | | G | |
| CM7 |
・間奏(2:20~2:53)
| Cm7(9) | | Dm7-5(b13) | G7(b9) |
| EbM7 | | Db6 | A7 |
| Fm7 | | Gb | | DbM7 | Abm7-5/Gb |
・Bメロ(繰り返し)
・サビ(繰り返し)
・アウトロ(4:07~5:09)
| Gbm7(9) | | Fm7(9) | |
| Eb7(#9) | | DbM7 | |
| Eb7(#9) | | DbM7 | |
| Gbm7(9) | | Fm7(9) | |
| Eb7(#9) | | DbM7 | |
| Eb7(#9) | | DbM7 | | Bbm7 | | Dbm7(9) | |
| CM7(13) |
キーがイントロからサビ終わりまでで、A→C→Eb→Bb→Db→Cとコロコロ変わる曲です。短三度の移動が多め。
以下自分なりの解説です。
・イントロ
| AM7 | A6 | A | A6 | ×4
キーはAです。
| CM7(9) | FM7(9) | Dm7 | G7 |
| CM7 |
Aから短三度上のキーCへ移動。展開を作っています。
FM7→Dm7→G7
ここはベースの動きも順々に上がっていくので次のCM7に着いた時が気持ちいいですね。
・Aメロ
| Am7 | | Fm7 | | EbM7 | | AbM7 | Absus2/Bb Gb/Ab |
CM7で歌が始まると思いきやAm7で始まります先ほどと一転して少し暗い雰囲気。
歌詞も「街灯が消えたなら...」と始まるのでマッチしています。
しかし!Am7でキーCで流れていくのかと思いきや次に来るのはFm7。
Fm7はキーCから短三度上のキーEbのⅡmのコードです。
キーCで見たところのⅣm7になるのですが、このコードは哀愁を出すにはとてもいいコード。これまた歌詞にうまくはまっています。
Fm7の後はそのままキーEbへシフト。そのまま下がってEbM7へ。ⅠM7のコード。
メロディーもそれに伴って下がっていて、さらに暗くしていきます。
最後のコードでベースをAbにもっていくことで次のAm7につなげています。
| Am7 | | Fm7 | | GbM7 | |Gb/Ab | |
2回目ではFm7→GbM7と違う流れにもっていっています。
ここではFm7をキーDbで見たときのⅢm7としてつなげていっています。
つまりその次からはキーDbとして考えて、GbM7はⅣM7、Gb/AbはⅣ/Ⅴとなります。
・Bメロ
| BbM7 | | Ebm7 | (Eb7sus4→Ebm7) |
キーDbのサブドミナント、ドミナントと続いてBメロに入りますが、来たのはBbM7。
キーDb上の456進行で6をⅥM7にしています。この進行はたまに見かけます。転調で使ったり。
ここからキーはBbに変わります。メロディーから見てもそう考えていいでしょう。
歌詞も 「瞼閉じれば広がる 君の夢」 と映像が変わっていて、転調による解放感と組み合わさっています。
その次のEbm7はキーBb上でのⅣm7(短三度上のキーDbの借用)です。また出てきました。
ⅠM7→Ⅳm7 という進行は、個人的には胸が締め付けられるようなもの悲しさを感じます。
僕の好きなアーティストだと、キリンジさんの「クレイジーサマー」という曲のAメロで使われています。
| BbM7 | F/A | Gm7 | Bdim7 |
| Cm7 | | F7 | |
その後は176と動いていき、Ⅰ#dim7を挟んでツーファイブ。サビへ持っていきます。
(ツーファイブとはⅡm7→Ⅴ7の進行のこと)
・サビ
| BbM7 | | Ebm7(9) | | Fm7 | Bbm7 |
サビはEbm7を使って、またキーDb(短三度上のキー)に戻っています。
キーDbから見て、
Ebm7→Fm7→Bbm7 は Ⅱm7→Ⅲm7→Ⅵm7 です。
コードの動きが、どんどん突き進んでいくようなイメージを生み出していて、歌詞も 「本当の願い 溶けだし染まる」 と、外に広がっていく感じのものになっています。
| Ebm7(9) | | Fb/Gb | Gb7 |
| DbM7 | | GbM7(9) | |
Ⅱm7→Ⅴ7→ⅠM7→ⅣM7 です。
| Gb | | G | |
| CM7 |
キーDbのⅣから、半音上に行ってキーCのⅤへ。
そこからキーCへ戻ってきます。
・間奏
| Cm7(9) | | Dm7-5(b13) | G7(b9) |
間奏ではまた短三度上のキーEbの進行になります。
Cm7はⅥm7、Dm7-5→G7はキーCmのツーファイブ
| EbM7 | | Db6 | A7 |
マイナーツーファイブが来るとⅥm7に行くのかなと思わせますが、ここはⅠM7へ。
DbはキーEbで言うとⅦbです。Ⅰ→Ⅶbの動きはよく見ます。
このⅦbはⅣの四度上であり、すなわちⅣから見れば「セカンダリーサブドミナント」の意味合いを持ちます。今回の次のFmまでの進行は、
大元が Db(Ⅶb)→AbM7(ⅣM7)
裏コードを使って Db(Ⅶb)→A7(Ⅳ#7)→AbM7(ⅣM7)
ⅣM7をⅡで代理 Db(Ⅶb)→A7(Ⅳ#7)→Fm7(Ⅱm7)
と考えることができます。
| Fm7 | | Gb | | DbM7 | Abm7-5/Gb |
Fm7→GbはAメロの二回目の解釈と同じでいいでしょう
最後のAbm7-5/Gbは次のBbM7へつながります。
構成音的に見てもBbM7へ半音でつながるところが多いため違和感なくつながっています。
・アウトロ
| Gbm7(9) | | Fm7(9) | |
Gbm7はキーEのⅡm7でFm7はキーEbのⅡm7だと思われます。
| Eb7(#9) | | DbM7 | |
ここの進行は自分でも確証のある解釈ができていないので省きます…
(Eb7をドッペルドミナントとみるといい気がしてます)
ここでDbM7はⅠM7、つまりキーはDbです。
| Bbm7 | | Dbm7(9) | |
| CM7(13) |
Bbm7はキーDbのⅥm7、Dbm7は裏コード的に考えるといいと思います。
最後はCM7に戻ります。
・最後に
コードを見ていきましたが、転調が多く(借用と言ってもいいですが)、とても面白い曲だなと感じています。本人のインタビューを見てみると、このアルバムの時はまだ音楽理論を全く知らなかったとのことで...感覚だけでここまで作れてしまうのはすごいとしか言いようがありません。
最後に実際にこのコードで耳コピをしてみたので参考にしたい方などは聴いてみてください。